古い掛け時計
見ているだけで 「コチ、コチ、コチ、コチ ・・・・」 聞こえてきませんか?
長い針(分針)が真上に来ると 「ジー」 とゼンマイの低い音がして
「ボーン、ボーン、ボーン ・・・」 と鳴ります。
この時計は私の夫の祖父の家で使っていたものです。義母が嫁ぐときに持ってきて以来、ずっと納戸に眠っていましたが、昨年 我家に譲り受けました。
唐草模様の風呂敷に包まれ文字盤は厚紙で保護してあったのですが、開けたときには文字盤のガラスが割れていました。汚れを拭いたり触っているうちに「コトン」と音がして、時計の中からゼンマイ回しが出てきました。早速ゼンマイを巻いて、振り子を揺らしたら・・・・ちゃんと動いたんですよ!ボンボン時計の懐かしさに浸っていたら、息子が部屋から出て来て「音が、うるさい。」の一言で運転終了。でも壁に掛けてあるだけで、レトロな存在感があります。
最近 息子が一人暮らしを始めたのをきっかけに、また動かすようになりました。今は振り子を調整中。何十年かぶりに働いたのに、1日で10分位の誤差です。振り子が左右に動くのを観るのも楽しいし、なんだか一生懸命やっている様子がいじらしくて、心が優しくなってきます。
振り子のコチコチ催眠術? この後、猫は眠ってしまいました。
この時計が過ごしてきた時間とそこで営まれてきた家庭の情景を想像しました。昭和初期の日本の生活は現代と比べれば、不便で貧しく大変だったろうと思います。しかしそれゆえに、人間の生き物としての感覚や感性は豊かで優れていたのではないでしょうか。
デジタル数字で表示される無機的な時間を視覚で知ることと、手でゼンマイを巻いて時計を動かし文字盤の針と音で感じることの違いです。現代人は暮らしの中で五感を育む機会が少なくなりました。人の感性(感受性)は感覚と呼応して磨かれてゆくので、五感を使うことは身体を使って自分自身の心を開いてゆくことです。
家庭や学校をはじめ社会の様々な場で「ふれあい」という言葉が大切にされています。それは心も体も触れ合う機会が減り、お互いの「つながり」を感じられなくなっている現状があるからでしょう。
現代人の五感(視覚、聴覚、味覚、臭覚、触覚)のなかで、最も失われている感覚が触覚なのだそうです。
木に触っていると癒されるとか、木は優しくて心がなごむと言われます。そしてその感覚の原点は「なつかしさ」ともつながります。日本は豊かな森林に恵まれ、大昔から木を生活のなかで使い続けてきました。だから木に触れると、眠っていた感性が目覚めるのでしょう。
いろいろな木のモノに触れて「これ良いな~」と感じたものを、毎日触り続けてみてください。いつか、それが自分にとってかけがえのない大切なモノになるはずです。そんな経験をとおして生き生きとした感性を磨いてゆけば、自分のまわりの人にも、自然にも、かけがえのない大切なモノがたくさんあること。そして、それらが「つながっている」ことに気付くでしょう。